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性行為の最中、なかなかイケない。時間ばかりかかって、結局最後まで射精できずに終わってしまう。早漏に比べて話題にされにくいぶん、遅漏や射精できない悩みをひとりで抱えている男性は少なくありません。
ところが、国の補助で行われた男性不妊の全国調査を見ると、この悩みは決して珍しいものではありませんでした。1年間に男性不妊で受診した7,253人のうち、射精障害は538人で、ED(勃起障害)の442人より多かったのです。
この記事では、遅漏や射精できない悩みを「オナニーではイケるか」で3つに見分ける方法から、男性不妊の外来のデータでわかった膣内射精障害の実態と原因、逆行性射精と薬の関係、実際の治療成績、何科に行けばよいかまでを、国の資料と添付文書の数字で解説します。
遅漏・射精できないのは「オナニーではイケるか」で見分ける
ひとくちに「イケない」「射精できない」といっても、中身は1つではありません。まず自分に聞いてほしいのが、「オナニーなら射精できるか」「イッた感覚はあるか」の2つです。
3つのパターンの早見表
| パターン | オナニーでは | イッた感覚 | 考えられる状態 |
|---|---|---|---|
| 性行為のときだけイケない | 射精できる | 性行為では来ない | 膣内射精障害(重度の遅漏) |
| イッたのに精液が出ない | 同じく出ない | ある | 逆行性射精 |
| どちらでも時間がかかる、イケない | 時間がかかる・できない | 来にくい | 薬の影響、神経の病気、年齢、EDなど |
※目安です。実際の原因は医療機関で確かめてください。
いちばん多いのは、1つ目の「オナニーではイケるのに、性行為ではイケない」パターンです。射精する力そのものには問題がないのに、膣の中でだけうまくいかない。この状態を膣内射精障害といいます。
遅漏は何分から? 時間の基準より「困っているか」
早漏には「挿入から約1分」という国際的な目安がありますが、遅漏には、広く使われている時間の基準はありません。大切なのは時間そのものより、射精したいのにできない状態がくり返され、本人やパートナーが困っているかです。時間がかかっても2人が満足しているなら問題はありません。反対に、毎回途中であきらめて終わる、妊活がうまく進まないといった困りごとがあるなら、対策を考えるタイミングです。
その「妊活がうまく進まない」という形で、遅漏に初めて向き合う男性が増えています。
妊活で気づく遅漏 男性不妊の外来では射精障害がEDより多い
厚生労働省の子ども・子育て支援推進調査研究事業として、横浜市立大学の湯村寧医師らが行った「我が国における男性不妊に対する検査・治療に関する調査研究」では、全国の泌尿器科の生殖医療専門医を対象に、2014年4月からの1年間に受診した男性不妊の患者を調べています。
男性不妊7,253人のうち射精障害は538人、EDの442人を上回った
| 男性不妊の原因 | 患者数 | 割合 |
|---|---|---|
| 精子をつくる働きの障害 | 5,991人 | 82.4% |
| 性機能障害 | 980人 | 13.5% |
| うち射精障害 | 538人 | 7.4% |
| うち勃起障害(ED) | 442人 | 6.1% |
| 精子の通り道が詰まる障害 | 286人 | 3.9% |
※厚生労働省 子ども・子育て支援推進調査研究事業「我が国における男性不妊に対する検査・治療に関する調査研究」平成27年度報告書(ダイジェスト版)より。2014年度に39人の専門医が診た新患の集計。
男性不妊の原因の8割以上は精子をつくる働きの問題ですが、射精障害だけで7.4%あり、EDより多くなっていました。報告書は、以前の調査と比べて性機能障害の患者数と比率が大きく増えたとし、その一因として「EDや膣内射精障害を有する不妊症患者が増加した事」を挙げています。厚生労働省の検討会で示された資料では、1996年度の調査で50人だった性機能障害の患者が、この2014年度の調査では980人と、約20倍になっていました。
射精障害で受診した56人の半数以上が膣内射精障害
では、その射精障害の中身は何なのでしょうか。同じ検討会の資料には、獨協医科大学で2014年に受診した射精障害の患者56人の内訳が載っています。
いちばん多かったのが膣内射精障害(重度の遅漏)で30人、次いで脊髄損傷などの神経性が11人、逆行性射精が8人、早漏が5人、射精不能が2人でした。資料には「不妊治療の現場では、圧倒的に遅漏が多い」とまとめられています。子どもがほしいのに膣の中で射精できないと、自然な妊娠が難しくなるからです。
オナニーではイケるのに性行為ではイケない(膣内射精障害)
では、なぜオナニーではイケるのに、膣の中ではイケなくなるのでしょうか。先ほどの56人のうち膣内射精障害の30人を原因別に見ると、誤ったマスターベーションが15人、心因性が15人と、ちょうど半々でした。
原因の54.1%は誤ったマスターベーション
同じ資料に載っている「遅漏もしくは膣内射精障害の原因」の集計では、次のような原因が挙がっています(1人が複数の原因を挙げているため、合計は100%を超えます)。
| 原因 | 割合 |
|---|---|
| 強い刺激(強く握る)のマスターベーションに慣れてしまった | 44.6% |
| 膣内とかけ離れた刺激(床オナ、シャワーの水圧など)のマスターベーション | 9.5% |
| マスターベーションのし過ぎ | 29.7% |
| 中折れしてしまうから | 18.9% |
| 挿入中あまり興奮しないから | 12.2% |
| 薬の影響 | 9.5% |
| 子作りによるプレッシャー | 4.1% |
| その他 | 18.9% |
※厚生労働省の検討会資料「男性に対するプレコンセプションケアの提案」(小堀善友医師)より。
最初の2つを合わせた「誤ったマスターベーション方法」が54.1%で最多です。年代別に見ると、強く握る刺激を挙げた人は20代で7割近くにのぼる一方、「中折れしてしまうから」は年代が上がるほど多くなっていました。若い世代はオナニーのくせ、年齢が上がるとEDが関わりやすい、という傾向が読み取れます。
床やシーツにこすりつけるやり方が最多
日本性科学会の阿部輝夫医師による「不適切なマスターベーション」の集計では、最も多かったのが手を使わないマスターベーション(101件)で、その内訳はシーツにこすりつける52件、布団や枕を股間に挟んでこする33件、うつぶせで手を添えて腹圧をかける5件などでした。次いで強すぎるグリップが63件、独りでないと射精できないが44件、脚を突っ張るが6件と続きます。
こうした強い刺激や決まった体勢に長く慣れていると、膣の中の刺激では弱すぎて射精まで届かなくなります。資料では、中高生の頃からの適切な自慰方法の啓発が、将来の射精障害や不妊の予防につながるとも提案されています。
オナニーのやり方を変える、性行為での工夫
膣内射精障害で自分でできることの基本は、膣の中に近い、弱い刺激で射精できるようにオナニーのやり方を変えていくことです。床やシーツにこすりつけるのをやめて手を使う、握る力を弱くする、脚を伸ばすなど決まった体勢でなくてもイケるようにしていく、といった練習です。いきなり刺激を弱くすると射精できなくなることもあるので、少しずつ段階的に変え、数週間から数か月かけて取り組みましょう。
性行為では、「絶対に射精しなければ」と自分にプレッシャーをかけないことが大切です。心因性の人も多いので、パートナーに悩みを打ち明け、射精にこだわらずに触れ合う時間から始めると、緊張がほぐれることがあります。妊活中は、排卵日だけに集中せず、ふだんから性行為の機会をつくっておくとプレッシャーが分散されます。
イッた感覚があるのに精液が出ない(逆行性射精)
オーガズム(イッた感覚)はあるのに、精液がほとんど、あるいはまったく出てこない。これが逆行性射精の特徴です。射精のときに本来閉じるはずの膀胱の出口が開いたままになり、精液が外ではなく膀胱のほうへ逆流してしまう状態で、射精後の尿が白くにごることがあります。
前立腺肥大症の薬シロドシンは約6人に1人
原因として多いのが薬の影響です。前立腺肥大症の治療薬ユリーフ(シロドシン)の添付文書では、射精障害(逆行性射精など)の頻度が17.2%とされ、国内の12週間の試験では22.3%、52週間の長期試験では25.0%に見られました。添付文書の「重要な基本的注意」には、特徴的な副作用として射精障害が高い頻度で見られるため、リスクを十分に検討し、患者に副作用を十分に説明したうえで使うよう書かれています。
前立腺肥大症の薬を飲み始めてから精液が出なくなったなら、それは薬の副作用かもしれません。ただし、自己判断で薬をやめるのではなく、処方した医師に相談してください。
糖尿病や手術のあと
薬のほかに、糖尿病、脊髄の損傷、前立腺やお腹・骨盤の手術なども、逆行性射精の原因になります。膀胱の出口を閉じる神経や筋肉の働きが損なわれるためです。逆行性射精そのものは体に害があるわけではないので、子どもを望んでいなければ治療しなくても問題ないことが多く、妊活中なら薬や、尿から精子を取り出して不妊治療に使う方法があります。
どちらでもイケないとき 年齢・薬・ED
オナニーでも性行為でも射精までに時間がかかる、あるいはイケない場合は、オナニーのくせより、体や薬、心の状態に原因があることが多くなります。
年齢を重ねると、陰茎の感覚が鈍くなったり射精の力が弱くなったりして、以前より時間がかかるようになることがあります。先ほどの集計でも「薬の影響」が9.5%あり、うつ病や不安の治療に使われる抗うつ薬の一部(SSRIなど)には射精を遅らせる作用があります。同じ仲間の薬が早漏の治療に使われているほどです。薬を飲み始めてからイキにくくなったなら、処方した医師に伝えましょう。
また、勃起が十分に硬くならない、途中で萎えてしまうといったEDがあると、刺激が十分に伝わらず、射精までたどり着けないことがあります。集計でも「中折れしてしまうから」が18.9%ありました。途中で萎えることもあるなら、中折れの原因と対策の記事もあわせて読んでみてください。
遅漏の治療 薬・カウンセリング・妊活の方法
では、医療機関ではどんな治療が行われ、どのくらい効いているのでしょうか。
遅漏の治療薬として承認された薬は見当たらない
早漏には海外で承認された治療薬がありますが、遅漏の治療薬として承認された薬は見当たりません。ネットで「遅漏改善薬」「遅漏改善サプリ」として売られている商品も、効果が確かめられたものではありません。遅漏の多くは薬よりも、オナニーのやり方の見直しや原因の治療で改善を目指すことになります。
男性不妊の外来ではアモキサピンが7割で有効、カウンセリングは3割
先ほどの全国調査には、男性不妊の外来で射精障害に行われた治療の成績も載っています。
| 治療 | 有効 | 無効 | 妊娠確認 |
|---|---|---|---|
| アモキサピン(本来はうつ病の薬) | 108件 | 45件 | 24件 |
| カウンセリング | 20件 | 53件 | 6件 |
| 精巣から精子を採取する手術(C-TESE) | 46件 | 1件 | 23件 |
※前出の男性不妊調査の報告書より、主な治療を抜粋。
アモキサピンは本来うつ病の薬で、射精障害は承認された効能ではありませんが、有効が約7割でした。一方、カウンセリングで有効だったのは約3割にとどまります。そして妊娠が目的なら、射精にこだわらず、精巣から直接精子を取り出して体外受精などにつなげる方法もあり、この方法は有効46件、無効1件でした。どの治療が向くかは射精障害のタイプによって違うので、専門医と相談して決めることになります。
何科に行くか
遅漏や射精障害の相談は、泌尿器科、とくに男性不妊や性機能を専門にする泌尿器科が向いています。妊活中なら、男性不妊外来のある医療機関を選ぶと、妊娠に向けた方法まで一緒に相談できます。
EDが関わっている場合は、ED治療薬が役に立つことがあります。ED治療薬はオンライン診療でも処方してもらえ、一例としてDMMオンラインクリニックでは、国内製のシルデナフィル50mgを1錠770円から、診察料なしで処方しています(別に配送料550円)。ただ、ED治療薬は遅漏そのものを治す薬ではありません。イケない原因がEDにあるのか、オナニーのくせにあるのかを見極めることが先です。
参照した情報
- 我が国における男性不妊に対する検査・治療に関する調査研究 平成27年度総括・分担研究報告書 ダイジェスト版(厚生労働省 子ども・子育て支援推進調査研究事業、研究代表者 湯村寧)
- 男性に対するプレコンセプションケアの提案(厚生労働省 検討会資料、小堀善友)
- ユリーフ錠 添付文書(2026年1月改訂)
- 逆行性射精(MSDマニュアル家庭版)

