禁煙で太るのは約8割で平均2kg 食事制限を先にやると失敗しやすい理由【2026年最新】

監修者

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松岡 雄治済生会横浜市東部病院 麻酔科

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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本記事は医師の監修を受けています

Weblioケア編集部が作成した本記事は、記載内容の医学的な正確性について医師の確認を受けています。監修の対象は医学的な記述であり、クリニックの料金・診療内容など編集部が公式サイトで確認した情報は監修の対象外です。本記事は特定の治療や医療機関を推奨するものではありません。診断・治療の判断は必ず医師にご相談ください。

「禁煙すると太る」は事実です。ただし、どれくらい増えて、いつまで増えて、どう対処すればいいのかまで書いてある記事は多くありません。

Weblioケア編集部は、厚生労働省の「禁煙支援マニュアル(第二版)」に当たり、体重増加の実数と対処の順序を確認しました。結論から書きます。体重が増えるのは禁煙者の約8割で、平均2kg。増えるのは禁煙後1年以内で、その後も増え続けることはありません。

そして、多くの記事が書き落としていることが2つあります。体重が増えている間は血圧や中性脂肪などの検査値も一時的に悪化すること、そして食事制限を禁煙直後から始めると、かえって禁煙に失敗しやすくなることです。

目次

約8割が増え、平均は2kg

厚生労働省の禁煙支援マニュアル(第二版)は、体重増加について次のように記載しています。

項目 内容
体重が増える人の割合 約8割
増加量の平均 2kg
3kg以上増えた人 27%(約4人に1人)
5kg以上増えた人 7%
増えやすい人 ヘビースモーカーほど増加しやすい
増える時期 禁煙後1年以内が多い
1年以降 持続的に増加する傾向はない

この記述の原典は、文部科学省科学研究費補助金による研究成果報告書「禁煙がメタボリック・シンドロームの構成因子に及ぼす長期的影響に関する検討」(研究代表者 中村正和、平成19年度、2008年)です。

ウェブ上では「平均2〜4kg」という幅で書かれていることが多いのですが、公的資料が示している平均値は2kgです。2割の人は増えていません。

平均だけを見ていると、実感とずれることがあります。同マニュアルは分布も示していて、3kg以上増えた人が27%、5kg以上増えた人が7%です。つまり4人に1人は平均を超えて増えており、そこそこ増える人は確かにいます。一方で5kg以上まで増えるのは14人に1人程度です。「平均2kg」と「自分は3kg増えた」は、どちらも起こりうる話で矛盾しません。

大事なのは「1年以内」と「その後は増え続けない」の2点です。禁煙したらそのまま太り続けるわけではありません。増加は最初の1年で頭打ちになります。

検査値も一時的に悪くなる

ここは、ほとんどの記事が書いていない部分です。

同マニュアルには、体重増加に伴い、血圧・中性脂肪・LDLコレステロールなどの検査値も一時的に悪化する傾向がみられると書かれています。そして体重増加が落ち着く禁煙2年目以降に改善することも示されています。

禁煙して半年後の健診で数値が悪くなっていると、「禁煙した意味がなかったのでは」と感じる人がいます。しかしこれは想定内の経過です。体重が落ち着けば検査値も戻ります。ここで禁煙をやめてしまうのが、いちばんもったいない選択です。

なぜ増えるのか

理由は2つあり、どちらもニコチンが抜けたことによる生理的な変化です。

離脱症状としての食欲亢進

禁煙後に中枢性の食欲亢進が続きます。これは意志の問題ではなく、離脱症状のひとつです。チャンピックスの電子添文にも、禁煙は治療の有無を問わず、食欲増加・体重増加を含むさまざまな症状を伴うと明記されています。薬を使っても使わなくても起きるということです。

基礎代謝の亢進作用がなくなる

ニコチンには基礎代謝を高める作用があります。喫煙中はこの作用で体重が抑えられていた面があり、禁煙するとその分がなくなります。同じ量を食べていても体重が増える理由はここにあります。

あわせて、禁煙後は数日で味覚と嗅覚が戻るため、食事がおいしく感じられるようになります。これ自体は禁煙の効果ですが、食べ過ぎにつながることがあります。体の変化の順序は禁煙の効果・メリットはいつからで扱っています。

対処の順序が大事、運動が先で食事は後

ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。

禁煙支援マニュアルは、体重への対処について「禁煙後の体重増加への対処は、禁煙が安定してからでも遅くはない」としたうえで、具体的な順序を示しています。

取り組み 始める時期 理由
運動(速歩など身体活動量を高める) 禁煙直後から 運動にはニコチン離脱症状の抑制効果があり、禁煙継続にも役立つ
食事の見直し 禁煙が安定してから 禁煙直後から取り組むと、離脱症状のコントロールがうまくいかない場合がある

多くの記事は「間食を低カロリーのものやガムに置き換える」といった食事の工夫を先に並べています。しかし公的資料が示している順序は逆です。食事制限を禁煙直後に始めると、離脱症状の管理が難しくなり、禁煙そのものが続かなくなる。

禁煙と減量を同時にやろうとして両方失敗するより、まず禁煙を成功させて、体重は後から整える。この順序のほうが結果的に早く着きます。

一方で、運動は禁煙直後から始めるべきとされています。体重管理のためだけでなく、イライラや喫煙欲求そのものを軽くする効果があるためです。速歩のような身体活動量を高める運動が勧められています。

薬で体重増加は防げるのか

マニュアルは、体重増加を最小限に抑えたい場合、体重増加の抑制効果のある禁煙補助剤を使いながら、禁煙直後から運動を増やす方法を勧めています。

ただし、どの薬にどれだけの抑制効果があるかという具体的な数値は、電子添文からは確認できませんでした。チャンピックスの電子添文では、食欲亢進が0.5%以上5%未満、体重増加が0.5%未満の副作用として記載されています。抑制側の効果を示す記述はありません。

ウェブ上には「チャンピックスは治療期間中の体重増加をマイルドにする効果が確認されている」という記述も見かけますが、出典を確認できなかったため、この記事では扱いません。薬ごとの違いはチャンピックスとニコチネルTTSの違いで、電子添文の実数をもとに整理しています。

2kgの増加と、喫煙を続けるリスク

体重増加を理由に禁煙をためらう人は少なくありません。数字で比べてみます。

増えるのは平均2kg、期間は1年以内、その後は増え続けない。検査値の悪化も一時的で、2年目以降に改善する。

一方、喫煙を続けた場合のリスクは長期にわたって蓄積します。厚生労働省のe-ヘルスネットによれば、禁煙して2〜4年で虚血性心疾患と脳梗塞のリスクが約3分の1減少し、10〜15年経てばさまざまな病気にかかる危険が非喫煙者のレベルに近づきます。

2kgと1年という限定つきの代償で、それだけのものが返ってきます。体重を理由に禁煙を先送りするのは、割に合いません。

体重が気になる人が具体的にやること

禁煙直後にやること

  • 速歩など、身体活動量を高める運動を始める
  • 体重を毎日同じ条件で測る。朝起きて排尿した直後、硬く平らな床の上、毎日同じような軽装
  • 食事制限はまだ始めない

禁煙が安定してからやること

  • 食事量と内容の見直し
  • 間食の置き換え
  • 飲酒量の確認(禁煙後に酒量が増える人がいます)

体重を測ること自体は禁煙直後から始めて構いませんが、日々の増減に一喜一憂しないことが大切です。増えるのは想定内で、しかも1年で止まります。

禁煙と体重に関するよくある質問

禁煙すると必ず太りますか

約8割の人に体重増加がみられますが、逆に言えば2割は増えていません。増える場合の平均は2kgです。

いつまで増え続けますか

増加は禁煙後1年以内にみられることが多く、その後は持続的に増加する傾向はないとされています。

禁煙したら健診の数値が悪くなりました

体重増加に伴って血圧・中性脂肪・LDLコレステロールが一時的に悪化する傾向が報告されています。体重増加が落ち着く禁煙2年目以降に改善します。

ダイエットと禁煙を同時にやってもいいですか

食事制限については、禁煙直後から取り組むと離脱症状のコントロールがうまくいかない場合があるため、禁煙が安定するまで待つことが勧められています。運動は禁煙直後から始めて構いません。

ヘビースモーカーほど太りますか

一般にヘビースモーカーでは体重がより増加しやすいとされています。

薬を使えば太りませんか

体重増加の抑制効果のある禁煙補助剤を使う方法は勧められていますが、薬だけで防げるものではありません。運動と組み合わせることが前提です。

この記事で参照した一次資料

体重の増減や検査値の変化には個人差があります。持病がある方や数値の変化が気になる方は、自己判断せず医師にご相談ください。

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