足底多汗症(足汗)|原因・においとの関係・治療法【2026年最新】

足の汗は、手のひらの汗とまったく同じ仕組みで出ています。どちらも温熱刺激では発汗せず、睡眠中には止まる。体温調節とは別系統の、精神性発汗と呼ばれる汗です。ガイドラインでも手掌と足底はまとめて「掌蹠多汗症」として扱われます。

ところが、治療の推奨度は同じではありません。手掌で第一選択に並ぶ塩化アルミニウムは、足底ではC1に下がります。外用抗コリン薬も手掌のBに対して足底はC1。同じ仕組みの汗なのに、選べる治療の重みが違うのです。

この記事では、日本皮膚科学会の「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」(PDF)をもとに、足底多汗症の特徴と、足という部位ならではの問題を整理します。

目次

手足の汗は「滑り止め」から始まっている

足底の発汗は、発生学的にはマウスやイヌ、ネコの足裏の肉球における発汗と同一のものです。動物の足裏の汗は、敵から逃げるときや高いところに飛び移るときの「滑り止め」の役割を持っています。

ヒトでは暗算、恐怖、痛み、不安といった精神的な負荷や、深呼吸、触刺激で誘発されるため、精神性発汗と呼ばれます。手掌・足底は温熱刺激では発汗せず、睡眠で発汗が消失することから、視床下部の体温調節中枢とは別の中枢に支配されていると考えられています。精神性発汗の中枢としては、扁桃体、前部帯状回、大脳基底核、縫線核の関与が指摘されています。

この中枢への入力刺激に対して病的に持続的な多量発汗が生じる場合に、原発性足底多汗症と診断されます。ガイドラインは、手掌・足底の多汗症が青年期までに発症し、しばしば多汗症の家族歴があることから、遺伝的に生じた発汗系交感神経の病的な過活動と考えられるとしています。

発汗量には日内変動と季節変動がある

掌蹠の発汗量は一定ではありません。日中の覚醒時に発汗が多く、大脳皮質の活動が低下する睡眠中は発汗が停止します。季節では、冬季の皮膚血流量が低下する時期に発汗量は減少し、夏季の皮膚血流量が増加する時期に増える傾向があります。

「靴を履いている日中だけつらい」という感覚には、生理学的な裏づけがあるということです。

足特有の問題|感染症の合併

足底多汗症が手掌多汗症と決定的に違うのは、皮膚のトラブルを併発しやすい点です。

ガイドラインは掌蹠多汗症の臨床症状として、汗で長時間湿潤した皮膚は汗疹を生じやすく、表皮が浸軟して剥脱すると記しています。そのうえで、真菌や細菌、そしてウイルスの感染を起こしやすいため、足白癬や尋常性疣贅を認めることがあるとしています。

合併しうる症状 原因
汗疹(あせも) 長時間の湿潤
表皮の浸軟・剥脱 同上
足白癬(水虫) 真菌感染
尋常性疣贅(いぼ) ウイルス感染

手のひらは空気に触れており、乾かす機会もあります。ところが足は靴と靴下に覆われ、湿潤状態が長時間続きます。多汗そのものより、その結果として生じる感染症のほうが先に受診の理由になることも珍しくありません。

足のにおいについても同じ構造があります。エクリン汗腺から出る汗は基本的に無臭ですが、湿潤環境が続けば皮膚常在菌が繁殖します。においが気になって受診する場合、根本にあるのは発汗量の問題かもしれません。

どのくらいの人が悩んでいるのか

足底多汗症は、四つの部位のなかで有病率がもっとも低い部位です。

調査 足底多汗症の有病率 他部位との比較
2013年・国内5,807人 2.79% 腋窩5.75%、手掌5.33%、頭部4.7%
2020年・国内60,969人 2.3% 腋窩5.9%、頭部・顔面3.6%、手掌2.9%

ただし発症は早い部位です。多汗を発症した平均年齢は足底で15.9歳。手掌の13.8歳に次いで早く、腋窩19.5歳、頭部21.2歳よりも前です。掌蹠多汗症について、ガイドラインは多汗症のなかでは比較的早期、小学校就学時期くらいから自覚することが多いと記しています。

有病率が低い一方で発症は早い。相談しにくいまま長期間抱えている人が多い部位だと考えられます。

足底多汗症かどうかを確かめる

ガイドラインは、局所多汗症の診断基準としてHornbergerらの基準を採用しています。局所的に過剰な発汗が明らかな原因のないまま6か月以上認められ、かつ次の6項目のうち2項目以上に当てはまる場合を多汗症と診断します。

確認すること 足底多汗症で見るポイント
最初に症状が出たのが25歳以下 足底の発症平均年齢は15.9歳。小学校就学時期から自覚することも多い
左右対称に発汗がみられる 片足だけなら別の原因を疑う
睡眠中は発汗が止まっている 掌蹠の汗は睡眠で消失するのが原則
1週間に1回以上、多汗のエピソードがある
家族歴がみられる 遺伝的な発汗系交感神経の過活動と考えられている
それらによって日常生活に支障をきたす 靴の中が濡れる、靴を脱ぐ場面が苦痛など

重症度の判定にはHDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale)が使われます。日常生活への支障の程度を本人の感じ方で4段階に分け、3と4が重症の指標です。

グレード 状態 位置づけ
1 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない 軽症
2 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある 中等症
3 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある 重症
4 発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある 重症

発汗量を実際に測る方法もあります。定性的測定のヨード紙法は安価で簡便なため最初に選ばれ、定量的測定の換気カプセル法では1分・1平方センチメートルあたり平均2ミリグラムを超える発汗量を重症としています。

手掌と推奨度が入れ替わる

ここが足底多汗症を理解するうえで、もっとも重要な点です。掌蹠とひとまとめに語られることが多い一方で、ガイドラインの診療アルゴリズムは手掌(図3)と足底(図4)で別々に示されており、推奨度も同じではありません。

治療法 足底 手掌
水道水イオントフォレーシス B B 同じ
塩化アルミニウム外用/ODT C1 B 足底のほうが低い
外用抗コリン薬 C1 B 足底のほうが低い(適応もない)
ボツリヌス毒素の局所注射 C1 C1 同じ(いずれも保険適用外)
内服抗コリン薬 C1 C1 同じ
交感神経遮断術(ETS) 条件付きB 足底はアルゴリズムに記載なし

差が生まれるのはエビデンスの量です。ガイドラインは塩化アルミニウムについて、腋窩と手掌には二重盲検試験・非盲検試験があり、ほとんどすべてにおいて治療効果があるという報告がそろっておりエビデンスレベルIII・推奨度Bとしています。一方、足底に関してはエビデンスレベルV、推奨度C1と考えられる、としています。

効果がないと分かっているのではなく、足底を対象にした質の高い研究が少ないということです。

足底で唯一Bなのはイオントフォレーシス

そのなかで、水道水イオントフォレーシスだけが足底でも推奨度Bです。ガイドラインは掌蹠多汗症に対して欧米・国内ともに良質なエビデンスレベルIIIの報告が多く認められるとしており、手掌と足底を区別せずBとしています。

手足を水道水に浸して微弱な電流を流す治療で、通電によって生じる水素イオンが汗孔を障害して狭窄させることで発汗が抑制されると考えられています。5〜15mAの直流電流または0〜20mAの交流電流で、20〜30分の通電を繰り返します。

ガイドラインが示す治療例では、初回は5〜10mAで5〜10分から始め、痛みの感じ方をみながら次回以降に電圧を上げ、治療時間を10〜15分程度まで延ばします。複数の臨床研究では6〜18回程度の施行で発汗量の低下が確認されています。国内の報告では、患者の右手・右足を水道水に浸した金属トレイに入れ、週1回の施行を繰り返して6回施行した後に、統計学的に有意な発汗量の低下が認められました。

足底多汗症にとって、これが事実上の第一選択ということになります。ただし通院を繰り返す前提の治療で、機器を導入している医療機関に通う必要があります。ガイドラインは、米国には家庭用機器の購入に保険が請求できる制度がある一方、日本ではインターネットやFAXなどで個人的に購入する方法しかないと明記しています。

塩化アルミニウムは濃度が高く、密封療法が推奨される

推奨度はC1ですが、実際にはよく用いられる治療です。保険診療に適用のある外用薬が存在せず、院内製剤として調製・処方されます。

足の裏は角層が厚いため、他の部位より高い濃度が用いられます。ガイドラインの外用方法では、掌蹠の軽症例は20〜30%の単純外用、中等症〜重症例は20〜50%の溶液または軟膏によるODT(密封療法)が望ましいとされています。就寝前に足底の発汗部位にACH溶液を塗布し、その上からゴム手袋やサランラップなどで覆って翌朝まで置く方法です。ACH軟膏の場合は多汗部位に直接外用し、靴下を装着して翌朝水洗いします。

効果が出るまで連日投与し、効果が出た後は発汗の様子により間隔をあけます。もっとも多い副作用は刺激性接触皮膚炎で、外用の中止またはステロイド軟膏の外用により軽快します。軽減させる工夫としては、濃度を薄める、投与間隔を調節する、短時間外用で洗い流すという方法が挙げられています。

外用抗コリン薬は足に適応がない

エクロックゲル・ラピフォートワイプは腋窩のみ、アポハイドローションは手掌のみに適応があります。足底に処方される保険適用の外用抗コリン薬は現在ありません。ガイドラインの推奨度も足底はC1です。

理由はこれまでの部位と同じで、足底を対象とした臨床試験が行われていないためです。ガイドラインは外用抗コリン薬について、作用機序を考えれば腋窩以外の部位でも発汗抑制作用が期待されるものの、いまだ十分な検討をされていない状態だと記しています。

ボツリヌス注射は保険適用外

足底へのA型ボツリヌス毒素の局注は推奨度C1で、保険適用外です。海外の報告では、10例の足底多汗症患者にBotox 100単位を投与し、投与後12週間ミノール法およびDLQIスコアともに著明な改善が認められました。19〜51歳の足底多汗症患者10例にBotox 50単位を投与した報告では、7日以内に8例で発汗が減少し、5例は約半年間発汗の低下が持続しています。

小児例では、12〜16歳の足底多汗症患者15例にBotox 2.5単位を1か所あたり20〜40か所投与し、十分な治療効果を得るには計75〜100単位が必要とされています。

投与量の目安は片足あたりBotox 50〜100単位、Dysport 100〜200単位です。ただし足底の場合、歩行時の違和感を生じることがある点は知っておく必要があります。ガイドラインは、Botox 100単位を投与した足底多汗症患者3例のうち1例に、軽度の両足底の筋力低下が約10日間認められたと記しています。

足底はETSのアルゴリズムに含まれない

交感神経遮断術について、ガイドラインの足底多汗症の診療アルゴリズム(図4)には記載がありません。手掌が条件付き推奨度B、腋窩と顔面が条件付きC1であるのに対し、足底は選択肢として提示されていないということです。

足の汗を支配する交感神経は胸部ではなく腰部の交感神経幹を経由するため、胸部交感神経遮断術の対象になりにくいという事情があります。手掌多汗症の手術を受けた場合に足底の発汗が変わるかどうかも、一定していません。

足底多汗症の治療|現実的な順序

段階 治療 推奨度 保険
第一段階
(相互に使い分け)
水道水イオントフォレーシス療法 B 施行が保険請求できる
20〜50%塩化アルミニウム外用/ODT C1 適用外(院内製剤)
第二段階 A型ボツリヌス毒素の局所注射 C1 適用外
第三段階 内服抗コリン薬/精神(心理)療法 C1 薬剤による

第一段階の2つは並列に置かれ、効果に応じて相互に使い分けることがガイドラインの図で示されています。どちらか一方を試して終わりという構造ではありません。

足底の場合、保険適用の外用薬が存在しないという制約があります。イオントフォレーシスは施行が保険請求できますが、機器を導入している医療機関に通う必要がある。塩化アルミニウムは院内製剤として調製している医療機関を探す必要がある。どちらも「対応している医療機関を見つけること」が最初のハードルになります。治療全体の順序と保険・自費の費用差は多汗症の治療法と費用の比較で整理しています。

受診の前に整理しておくとよいこと

確認すること なぜ聞かれるか
症状が出始めたのはいつ頃か 25歳以下かどうかが分かれ目。足底は15.9歳が平均で、小学校就学時期から自覚することも
左右対称に出ているか 片足だけなら別の原因を疑う
睡眠中は汗が止まっているか 止まらないなら原発性の枠に収まらない
家族に同じ症状の人がいるか 診断基準の項目
水虫やいぼ、皮膚のただれがあるか 足底多汗症では感染症を合併しやすい。同時に治療が必要になる場合がある
どの場面で具体的に困っているか 治療の選び方を決める最重要項目

足底多汗症では、皮膚のトラブルの有無を伝えることがとくに重要です。足白癬や尋常性疣贅を合併している場合、そちらの治療を並行して行う必要があります。また、塩化アルミニウムの外用は傷がある部位では刺激性接触皮膚炎を起こしやすいため、皮膚の状態によって使える治療が変わります。

ガイドラインは、局所多汗症の治療は患者本人が困らなければ行う必要はなく、患者自らの希望により治療は開始されるべきだとしています。そのうえで、治療のゴールは発汗が起こらないように常にコントロールすることではなく、多汗によって損なわれている生活の質が改善されることにあると明記しています。

よくある質問

何科を受診すればいいですか

皮膚科が主な診療科です。ただし足底多汗症の第一選択であるイオントフォレーシスは、機器を導入している医療機関に限られます。塩化アルミニウムも院内製剤なので、調製している医療機関を探す必要があります。受診前に、その医療機関が多汗症の診療を行っているか、どの治療に対応しているかを確認しておくと確実です。水虫やいぼを併発している場合は、そちらの治療と併せて相談できます。

足のにおいも治りますか

エクリン汗腺から出る汗は基本的に無臭ですが、湿潤環境が長く続くと皮膚常在菌が繁殖してにおいの原因になります。発汗が抑えられれば湿潤環境が改善するため、においが軽くなったと感じる可能性はあります。ただし足白癬などの感染症を合併している場合は、そちらの治療も必要です。

市販の制汗剤では対処できませんか

市販の制汗剤の多くは塩化アルミニウム系で、院内製剤と成分は共通しています。違いは濃度で、市販品は日常使用の安全性を考慮して低めに設定されているのが一般的です。足の裏は角層が厚いため、ガイドラインが示す処方濃度は20〜50%と高く、中等症以上では密封療法が推奨されます。市販品だけで対処しきれないケースがあります。

子どもでも治療できますか

掌蹠多汗症は小学校就学時期くらいから自覚することが多く、足底の発症平均年齢は15.9歳です。ボツリヌス注射については、12〜16歳の足底多汗症患者15例への投与報告があります(保険適用外)。イオントフォレーシスや塩化アルミニウムの外用については年齢の制限がガイドラインに明記されていませんので、医療機関に相談してください。

手汗も一緒にある場合はどうなりますか

掌蹠多汗症として、手足の両方に症状が出るケースは多くあります。ガイドラインは、ひとりの患者に多汗の部位が複数存在する場合や、ひとつの治療選択肢だけでは十分な汗のコントロールが困難な状況では、複数の治療を組み合わせることも試されてよいとしています。イオントフォレーシスは手と足を同時に施行できる方法でもあります。ただし複数の抗コリン薬を併用する場合は作用が強まる可能性があるため、使用中の薬をすべて医師に伝えてください。

靴や靴下の選び方で変わりますか

ガイドラインは、これらの治療を行っても十分な治療効果が得られない場合もあるとしたうえで、汗をかいても生活がしやすくサポートになるような衣類や生活用品を適宜取り入れることを検討したいと述べています。汗を直接減らす治療とは別に、湿潤環境を減らす工夫には意味があります。足白癬や尋常性疣贅の予防という観点からも重要です。

参考にした一次資料

本記事はガイドラインの原発性足底多汗症における診療アルゴリズム(図4)およびCQ1〜CQ5の各推奨と解説をもとにまとめています。治療の適否は個々の状態によって異なりますので、実際の判断は医療機関にご相談ください。

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