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痩せる薬は内科でもらえるのか、ドラッグストアで買えるのか、本当に効くのはどれなのか。調べるとランキングや体験談がたくさん出てきますが、薬の効き目は本来、国の承認審査で使われた臨床試験の数字で確かめられます。
Weblioケア編集部で、飲む痩せ薬として知られるアライ、サノレックス、防風通聖散、リベルサスの審査報告書や添付文書を読み比べたところ、意外なことがわかりました。たとえば、ドラッグストアで買えるアライの国の審査資料には、「本剤はいわゆる痩せ薬ではありません」と明記するよう書かれています。
この記事では、痩せる薬をもらえる場所と対象者を整理したうえで、国の資料に載っている数字から、それぞれの薬の本当の効き目を解説します。
痩せる薬は「どこでもらうか」で使える人が違う
痩せる薬(ダイエット薬)を手に入れる方法は、市販、保険、自由診療の3つです。先にこの全体像を押さえておかないと、自分には使えない薬の情報ばかり集めることになります。
市販・保険・自由診療の早見表
| 入手方法 | 主な薬 | 使える人 |
|---|---|---|
| 市販(薬局・ドラッグストア) | アライ、防風通聖散 | アライは18歳以上で腹囲が男性85cm以上・女性90cm以上、生活習慣の改善に取り組んでいる人。BMI35以上の人や、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病などと診断されている人は使えない |
| 保険(病院・内科) | ウゴービ、ゼップバウンド、サノレックス、防風通聖散 | 肥満症と診断された人など、それぞれの薬の条件を満たす人 |
| 自由診療(ダイエット外来・オンライン診療など) | マンジャロ、リベルサスなどのGLP-1 | 医師が処方してよいと判断した人。全額自己負担 |
※アライは添付文書の「してはいけないこと」、ウゴービ・ゼップバウンドは国の最適使用推進ガイドラインをもとにした要約です。
この表でおもしろいのは、市販のアライを使えない人と、保険の肥満症治療薬を使える人が、ほぼ重なっていることです。健康障害のない「おなか周りが気になる人」は市販、健康障害をともなう「肥満症の人」は保険、と入口がはっきり分かれています。
内科で「痩せたい」と伝えるとどうなるか
内科で保険を使って痩せる薬をもらえるのは、肥満症と診断された人に限られます。たとえばウゴービやゼップバウンドを保険で使うには、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかがあり、BMI35以上、またはBMI27以上で肥満に関連する健康障害が2つ以上あることなどが条件です。ゼップバウンドは、管理栄養士の栄養指導を6か月以上受けていることも求められます。
この条件に当てはまらない人が「ダイエットのために痩せる薬がほしい」と相談しても、保険は使えません。自由診療で処方している内科もあれば、ダイエット目的の処方はしない内科もあります。Weblioケア編集部が地域ごとに調べた際も、札幌では内科でダイエット目的のマンジャロを処方するところが見つからなかった一方、名古屋では自費で処方する内科が複数ありました。
国の資料で見る、飲む痩せ薬の本当の効き目
では、実際に飲む痩せ薬はどのくらい効くのか。ここからは、国の承認審査や添付文書に載っている日本人の試験の数字を、薬ごとに見ていきます。
アライ:24週で体重−2.8%、偽薬との差は1.6%
アライ(成分:オルリスタット)は、食事に含まれる脂肪の吸収を抑え、便と一緒に出す薬です。審査報告書には、おなかの内臓脂肪が多い日本人200人を、アライのグループと偽薬(プラセボ)のグループに分けて24週間飲んでもらった試験の結果が載っています。
| 項目 | アライのグループ | 偽薬のグループ |
|---|---|---|
| 内臓脂肪の面積 | −13.50% | −5.45% |
| 腹囲 | 97.6cm→95.2cm(−2.51%) | 97.4cm→95.9cm(−1.55%) |
| 体重 | 80.4kg→78.2kg(−2.79%) | 78.6kg→77.6kg(−1.22%) |
※アライ審査報告書(令和4年)の国内第Ⅲ相試験より。両グループとも、食事と運動の見直しを並行して行っています。
内臓脂肪は偽薬より大きく減っていて、アライの効き目は確かにあります。一方、体重で見ると、半年で約2kg、偽薬との差は体重の1.6%ほどです。体重80kgの人なら1kg強の差にあたります。腹囲の差も1cmほどでした。
アライの資料に書かれた「痩せ薬ではありません」
実は、同じ成分の市販薬は、アメリカやヨーロッパでは「体重減少」を効能として承認されています。ところが日本では、効能は「腹部が太めな方の内臓脂肪および腹囲の減少」だけです。さらに審査報告書には、痩身目的で不適正に使われないよう、使用者向けの資料に「本剤はいわゆる痩せ薬ではありません」と明記することが書かれています。
やめたあとのデータもあります。試験では、24週飲み終えたあと、薬をやめて12週間様子を見ています。この期間に進んだアライのグループ75人の体重は、平均77.45kgから78.65kgに増えていました。つまり、アライは生活習慣の見直しを助ける薬であって、飲むだけで体重がどんどん落ちる薬ではないということです。
食欲を抑える薬サノレックス:何kg減ったかの数字が公開されていない
食欲を抑えることを効能とした市販薬は、日本にはありません。病院で処方される食欲を抑える飲み薬として知られているのが、サノレックス(成分:マジンドール)です。脳に働いて食欲を抑えます。ただし保険で使えるのは、BMI35以上などの高度肥満症の人に限られ、使える期間も3か月が限度です。
効き目の数字を探すと、医療者向けのインタビューフォームに載っているのは、1985年の文献をもとにした44人の「改善度」だけでした。中等度以上改善した人が43.2%(44人中19人)とされていますが、何kg減ったかという数字は公開資料にありません。依存性に注意が必要な薬でもあり、ダイエット目的で気軽に使える薬ではありません。
防風通聖散:添付文書に臨床成績の項目がない
漢方薬の防風通聖散は、医療用の効能に「肥満症」が含まれ、ドラッグストアでも買えます。何キロ痩せたかを知りたい人は多いのですが、医療用の添付文書には、そもそも臨床成績の項目がありません。国の資料で、体重がどれだけ減るかを確かめることはできないということです。
効能をよく読むと、対象は「腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなもの」とされています。便通がよくなることで体重が少し動くことはあっても、誰にでも効く痩せる薬ではありません。
リベルサス:日本人の試験で52週−2.9kg
リベルサスは、GLP-1という食欲を抑えるホルモンの働きを持つ、世界で初めての飲むタイプの薬です。ただし、日本での承認は2型糖尿病の治療薬で、肥満の治療薬ではありません。
添付文書に載っている日本人の2型糖尿病の人243人の試験では、52週間で体重が14mgのグループで−2.9kg、偽薬のグループで−1.0kgでした(試験開始時の平均体重は14mgのグループで68.0kg)。別の日本人の52週の試験では、14mgのグループは−1.7kgです。どちらも糖尿病の人の結果で、糖尿病ではない人がダイエットのために飲んだときの効き目を示すデータではありません。
飲み薬で足りないときの選択肢
ここまで見てきたとおり、飲む痩せ薬の効き目は、国の資料で見るかぎり「数kg」の世界です。では、それ以上の減量を目指すにはどうするか。
保険で使える肥満症の治療薬と条件
現在、肥満症の治療薬として保険で使えるのは、週1回の注射薬のウゴービ(成分:セマグルチド)とゼップバウンド(成分:チルゼパチド)です。飲み薬よりも大きな減量が確かめられていて、どのくらい減るかは痩せる注射の記事で詳しく解説しています。
ゼップバウンドと同じ成分の薬が「マンジャロ」、ウゴービと同じ成分の薬が「オゼンピック」や「リベルサス」という名前で、2型糖尿病の薬として使われています。成分が同じでも、肥満症の治療で保険が使えるのはウゴービとゼップバウンドだけです。
自由診療のGLP-1と、救済制度の対象外になる問題
保険の条件に当てはまらない人の受け皿になっているのが、自由診療で処方されるマンジャロやリベルサスなどのGLP-1です。ただし、日本糖尿病学会は、これらを美容・痩身・ダイエットの目的で使うことを推奨しないという見解を出しています。ダイエット目的での安全性と有効性が確立していないこと、糖尿病の患者に薬が届きにくくなったこと、そして適応外の使用で起きた副作用は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象にならないことが理由です。
それでも自由診療でリベルサスの処方を受ける場合、値段は街やクリニックで大きく違います。宇都宮ではリベルサスの値段が内科と美容クリニックで大きく違い、金沢では女性がいちばん安く受けられるのが病院の外来、北九州では3mgだけを出すクリニックと14mgまで出すクリニックに分かれていました。大きな街では、東京のリベルサスは、女性の3mgの最安が渋谷と五反田でほぼ2倍違う、大阪のリベルサスは、女性の最安が梅田でも心斎橋でもなく今里・鶴見・旭区の内科、名古屋のリベルサスは、女性の安い順の上位が名駅ではなく丸の内と矢場町、福岡のリベルサスは、女性が受けられる最安が博多でも天神でもなく大濠公園の内科、札幌のリベルサスは3mgの安い順の上位3つが男性向けで、うち1つは女性1人でも来院できると書いているという結果です。
それを理解したうえで自由診療を選ぶ場合、オンライン診療という方法もあります。一例として、DMMオンラインクリニックはマンジャロを診察料0円で処方しています。2.5mgの1か月分は、単月で買うと12,500円、3か月分をまとめて買うと1か月あたり10,500円で、5mgは単月22,800円です。ほかに配送料が550円かかります。使い終わったペンは住んでいる自治体のルールで捨てるよう案内されていて、クリニックでの廃棄を希望するときは、問い合わせたうえで自分で送料を払って送り返します。地域ごとの料金の違いは、福岡のマンジャロの記事などでまとめています。DMMで扱うダイエットの薬の値段と、同じ成分のゼップバウンドとの値段の差はDMMオンラインクリニックのメディカルダイエットの口コミと料金で比べています。
個人輸入・通販の痩せ薬の危険
インターネットの個人輸入代行サイトや通販では、海外の痩せ薬が売られています。しかし、個人輸入の医薬品には偽物や表示と成分が違う製品が混ざっている危険があり、厚生労働省も注意を呼びかけています。重い健康被害が起きても、救済制度の対象にはなりません。
国の資料を読むと、承認された飲み薬でさえ、効き目は「数kg」で、やめれば戻りやすいものでした。「飲むだけで何kgも痩せる」とうたう通販の薬は、その時点で疑ってかかるべきです。痩せる薬を使うなら、医師の診察を受けて処方されたものにしてください。
参照した情報
- アライ 審議結果報告書・審査報告書(PMDA)
- 一般用医薬品:アライ(JAPIC)
- サノレックス錠 医薬品インタビューフォーム(PMDA)
- ツムラ防風通聖散エキス顆粒(医療用)添付文書(PMDA)
- リベルサス錠 添付文書(PMDA)
- GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解(日本糖尿病学会)
- 肥満症治療薬の「ウゴービ」と「ゼップバウンド」、最適使用推進ガイドラインに沿った使用を(GemMed)
- ゼップバウンドの保険適用に関する情報(日本イーライリリー 医療関係者向け)
- 医薬品副作用被害救済制度(PMDA)
- 医薬品等の個人輸入について(厚生労働省)

