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おしっこをすると尿道がしみる、尿道の先がかゆい、下着に膿のようなものが付いている。尿道炎を疑ったとき、多くの人がまず考えるのは「性病なのか、それ以外なのか」と「病院に行かずに治せないか」の2つです。
先に結論を書くと、男性の尿道炎の多くは性感染症で、市販薬で治す方法はありません。さらに、手元に余っている抗生物質を飲んで様子を見る、という方法もおすすめできません。その理由は、国が毎年まとめている淋菌の薬剤耐性の調査の数字を見るとはっきりします。
この記事では、尿道炎の症状と原因、性病以外でなることはあるのかを整理したうえで、国の調査データから「なぜ自己判断の薬では治らないのか」を解説します。
尿道炎とは 症状と膀胱炎との違い
尿道炎とは、尿の通り道である尿道に炎症が起きた状態です。原因の多くは細菌などの感染で、男性では性行為でうつる感染症が大部分を占めます。
かゆい・排尿痛・膿・違和感
尿道炎の主な症状は次のとおりです。ひとつだけのこともあれば、いくつかが重なることもあります。
- おしっこをするときに痛い、しみる
- 尿道の先や奥がかゆい、むずむずする
- 尿道から膿が出る、下着に白や黄色いものが付く
- 尿道口が赤い、朝いちばんに尿道口がくっついている
見た目でわかるのは尿道口の赤みや膿くらいで、見た目がふだんどおりでも尿道炎のことはあります。かゆみやむずむず感だけが続くのも、尿道炎のよくある出方です。痛みがないからと気のせいにしないことが大切です。
膀胱炎との違い
尿道炎とよく混同されるのが膀胱炎です。どちらもおしっこのときに痛みますが、炎症の場所と主な原因が違います。
| 比べる点 | 尿道炎 | 膀胱炎 |
|---|---|---|
| 炎症の場所 | 尿道(尿の出口までの通り道) | 膀胱(尿をためる袋) |
| 多い人 | 男性 | 女性 |
| 主な原因 | 淋菌・クラミジアなどの性感染症 | 大腸菌などの細菌 |
| 目立つ症状 | 尿道の痛み・かゆみ、尿道からの膿 | おしっこの終わりの痛み、頻尿、残尿感 |
男性で、尿道から膿が出る、尿道そのものがかゆいという場合は、膀胱炎より尿道炎を考えるのが自然です。
男性の尿道炎の原因の多くは性感染症
日本感染症学会と日本化学療法学会のガイドラインでは、男性の尿道炎の原因として最も多いのがクラミジア、次が淋菌とされています。この2つがどれだけ身近な病気なのかは、国の報告数からも見えてきます。
国の報告数では、淋菌は男性が女性の約3倍
厚生労働省の資料によると、全国976か所の定点医療機関から報告された2024年の件数(暫定値)は次のとおりです。
| 病気 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 性器クラミジア感染症 | 14,851件 | 14,944件 |
| 淋菌感染症 | 6,561件 | 2,228件 |
※厚生労働省「日本の性感染症の発生動向」(2025年5月)より。定点医療機関からの報告数で、全国の患者数そのものではありません。
クラミジアは男女ほぼ同じなのに、淋菌は男性が女性の約3倍です。これは、淋菌に感染した男性は尿道炎としてはっきり症状が出やすく、受診につながりやすい一方、女性は症状が出にくいことが関係していると考えられます。資料では、クラミジアと淋菌はどちらも、この10年で20代の報告が増えていると指摘されています。
淋菌とクラミジアは、膿の色と症状が出るまでの日数で見当がつく
自分がどちらなのか、ある程度の見当をつける方法があります。ガイドラインには、両者の違いが次のように示されています。
| 見るポイント | 淋菌 | クラミジア |
|---|---|---|
| 感染から症状が出るまで | 3〜7日 | 1〜3週間 |
| 膿の量と色 | 多い、黄白色でどろっとしている | 少ない、透明に近くさらっとしている |
| おしっこの痛み | 強い | 軽い |
| 症状が出ない人 | 少ない | 約半数 |
※男性の場合。JAID/JSC感染症治療ガイドライン2018をもとに作成。
性行為から数日で黄色い膿がたくさん出て強く痛むなら淋菌、1〜3週間たってかゆみや透明な分泌物が少し出る程度ならクラミジアが疑われます。ただし、淋菌の尿道炎の20〜30%ではクラミジアも同時に見つかるとされていて、表はあくまで目安です。
マイコプラズマ・ジェニタリウムなどそのほかの原因
淋菌もクラミジアも見つからない尿道炎もあります。原因として知られているのは、マイコプラズマ・ジェニタリウム、ウレアプラズマ、トリコモナスなどで、これらも性行為でうつります。マイコプラズマ・ジェニタリウムは一般的な性病検査の項目に入っていないことがあるので、「クラミジアも淋菌も陰性なのに症状が続く」ときは、医師に相談してみてください。
尿道炎は性病以外でもなるのか
「性病ではないと思いたい」という気持ちは自然なものです。では、性病以外で尿道炎になることはあるのでしょうか。
性行為がなくてもなる尿道炎
性病以外が原因の尿道炎もあります。ガイドラインでも、大腸菌などの一般的な細菌による尿道炎は、性感染症の尿道炎と区別して扱われています。尿道にカテーテルなどの器具を入れたあとに起こることもあります。
ただし、性病は膣への挿入だけでなく、オーラルセックスでもうつります。のどに感染していても症状はほとんど出ないため、相手に自覚がないまま尿道にうつることがあります。「挿入はしていない」「口だけだった」という場合も、性感染症の可能性は残ります。性行為の機会が少しでもあったなら、まず性病の検査で陰性を確かめてから「性病以外」を考えるのが正しい順番です。
ストレスで尿道炎になるのか
ストレスそのものが尿道炎の原因菌を生むわけではありません。感染による尿道炎は、菌がうつることで起こります。一方で、検査で菌が見つからないのに尿道の違和感や痛みが続くこともあり、その場合はほかの病気が隠れていることもあります。「ストレスのせい」と決めつけず、泌尿器科で相談してください。
手元の抗生物質や市販薬では治らない理由
できれば病院に行かずに治したい。そう考えて、ドラッグストアの薬や、以前もらって余っている抗生物質を試そうとする人もいます。ここからが、この記事でいちばん伝えたいところです。
尿道炎を治す抗菌薬は市販されていない
淋菌やクラミジアによる尿道炎を治すには、菌を殺す抗菌薬(抗生物質)が必要です。日本では抗菌薬は医師の処方がなければ手に入らず、ドラッグストアに尿道炎を治す薬は置いていません。膀胱炎向けの漢方薬やかゆみ止めはありますが、原因の菌を殺す薬ではないので、症状が和らいでも菌は残ったままです。
国の調査では、淋菌の約9割にシプロフロキサシンが効かない
では、手元に余っている抗生物質ならどうか。厚生労働省の「薬剤耐性ワンヘルス動向調査」では、全国の診療所から集めた淋菌がどの抗菌薬に耐性を持っているか(薬が効かなくなっているか)を毎年調べています。2024年に集めた788株の結果は次のとおりです。
| 抗菌薬 | どんな薬か | 耐性の割合(2024年) |
|---|---|---|
| シプロフロキサシン | ニューキノロン系の飲み薬 | 87.4% |
| ベンジルペニシリン | ペニシリン系 | 59.1%(効きにくい株を含めると99.2%) |
| セフィキシム | セフェム系の飲み薬 | 24.3% |
| アジスロマイシン | クラミジアの治療にも使う飲み薬 | 19.0% |
| セフトリアキソン | 注射薬 | 0.6% |
| スペクチノマイシン | 注射薬 | 0.0% |
※厚生労働省「薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2025」表30より(EUCASTの基準による判定)。
ニューキノロン系の飲み薬は、膀胱炎などでもよく処方される身近な抗菌薬です。しかし淋菌に対しては、10株のうち約9株にすでに効かない状態です。ペニシリン系は、効きにくい株を含めるとほぼすべてに効果が期待できません。飲み薬のセフェム系も約4株に1株が耐性です。手元の薬を飲んで症状が少し軽くなっても、菌が生き残り、しかも薬が効かない菌だけが残るおそれがあります。
確実に効く薬は、実質的に注射1種類だけ
表で耐性がほとんどないのは、セフトリアキソンとスペクチノマイシンという2つの注射薬だけです。報告書は、スペクチノマイシンはのどの淋菌には効かないため、実質的にはセフトリアキソンが唯一残された薬剤だと書いています。
そのため、ガイドラインで示されている淋菌の尿道炎の治療は、セフトリアキソンの注射(点滴)を1回行う方法です。クラミジアの尿道炎は、アジスロマイシンを1回飲む方法などで治療します。どちらなのかによって薬がまったく違うので、検査で原因を確かめることが治療の出発点になります。
症状が消えても治ったとは限らない
「膿が出ていたのに自然に治った」という話を見かけることがありますが、症状が軽くなったり見えなくなったりしただけで、菌がいなくなったとは限りません。クラミジアは約半数が無症状で、症状が消えた状態でもパートナーにうつしたり、男性では精巣上体炎を起こしたりすることがあります。
治療したあとも、治ったかどうかは検査で確かめます。ガイドラインでは、クラミジアの場合、治療から2〜3週間後に検査で菌が消えたことを確認するとされています。確認できるまでは性行為を控えましょう。
女性の尿道炎
女性の場合、男性とは症状の出方も、考えるべき病気も違ってきます。
女性は症状が出にくい
クラミジアや淋菌に感染しても、女性は症状が出ないことが多いとされています。女性ではこれらの菌が尿道よりも子宮の入り口(子宮頸管)に感染することが多く、気づかないまま進むと将来の不妊の原因になることもあります。先ほどの報告数で淋菌の女性の件数が少なかったのも、女性が症状に気づきにくいことが関係していると考えられます。パートナーの男性が尿道炎と診断されたら、症状がなくても検査を受けることが大切です。
カンジダや膀胱炎との見分け方
女性は尿道が短く、膣や外陰部と近いため、「尿の出口が痛い・かゆい」という症状が、尿道炎以外の病気で出ることもよくあります。目安は次のとおりです。
- 膀胱炎:おしっこの終わりに痛む、何度もトイレに行きたくなる、残尿感がある
- カンジダ:外陰部の強いかゆみ、白くポロポロしたおりもの
- クラミジア・淋菌:症状が出ないことが多い。おりものが増える、不正出血、下腹部の痛みが出ることもある
おしっこのとき以外も痛む場合は、外陰部の炎症や性器ヘルペスなども考えられます。自分で見分けるのは難しいので、受診先を考える参考にとどめてください。
おりものの色やにおいの変化で気づく病気の見分け方は、おりものの色・におい・かゆみの記事にまとめています。
何科で検査・治療を受けるか
市販薬でも手元の薬でも治せないとなると、次はどこへ行くかです。
男性は泌尿器科、女性は婦人科か泌尿器科
男性の尿道炎は、泌尿器科か、性病科・性感染症内科を掲げるクリニックが相談先です。女性は、おりものや外陰部の症状もあるなら婦人科、おしっこの症状が中心なら泌尿器科が向いています。保健所では匿名・無料で検査を受けられる場合がありますが、治療は医療機関で受けることになります。
淋菌はオンラインでは治せない
ここまで見てきたとおり、淋菌の治療は注射が前提です。黄色い膿がたくさん出るなど淋菌が疑われる場合は、最初から対面の医療機関を受診するのが近道です。
症状だけでどの性病かを自分で判断するのは難しいものです。どこを受診すればよいか迷う場合は、DMMオンラインクリニックなどのオンライン診療で医師に相談する方法もあります(診察料0円)。ただし、オンラインで治療できるのはクラミジア・性器ヘルペス・トリコモナス・ウレアプラズマ・カンジダに限られ、淋菌や梅毒は対面の医療機関で治療を受けることになります。また、検査結果がない場合は、適切な治療ができないこともあります。
パートナーも一緒に治療する
ガイドラインでは、パートナーの検査と治療を同時に行うことが必須とされています。自分だけ治しても、パートナーが感染したままなら再びうつってしまうからです。とくに女性は無症状のことが多いので、「相手には症状がないから大丈夫」とは言えません。のどの感染が気になる場合は、喉の性病の記事もあわせて読んでみてください。
参照した情報
- 薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2025(厚生労働省)
- 日本の性感染症の発生動向(厚生労働省)
- JAID/JSC感染症治療ガイドライン2018 男性尿道炎とその関連疾患(日本感染症学会・日本化学療法学会)
- クラミジア、淋菌、マイコプラズマ・ジェニタリウム(国立健康危機管理研究機構 エイズ治療・研究開発センター)
- ガイドライン委員会(日本性感染症学会)

