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「痩せる注射で体重の2割が減る」「1年で10kg以上落ちる」。SNSや広告でこうした話を見かけて、気になっている人は多いと思います。では、その数字はどんな人が、どの薬を、どれだけの量で、何か月打った結果なのでしょうか。
Weblioケア編集部で、ゼップバウンド、ウゴービ、マンジャロの3つの添付文書に載っている日本人の試験の結果を読み比べました。すると、「2割減」は特定の薬を多めの量で1年半近く続けたときの数字で、自由診療でよく処方される量とは条件が違うことがわかりました。
この記事では、痩せる注射とは何かを整理したうえで、日本人の試験で何キロ痩せたかを添付文書の数字で比べ、副作用、保険が使える人、自由診療の注意点を解説します。
痩せる注射(ダイエット注射)とは
「痩せる注射」「ダイエット注射」と呼ばれているものには、狙っているものがまったく違う3つの種類が混ざっています。
体重が減る注射・部分痩せの注射・栄養系の注射
1つ目は、マンジャロやウゴービのように、食欲を抑えて食べる量を自然に減らすGLP-1系の注射です。2つ目は、あご下やお腹など打った場所の脂肪を減らす脂肪溶解注射で、体全体の体重を落とすものではありません。使う薬剤はクリニックごとに違い、国内で承認されているかどうかも薬剤によって異なります。3つ目は、にんにく注射やプラセンタ注射のような栄養・ビタミン系の注射で、疲労回復などが目的です。
体重を減らす根拠があるのはGLP-1系だけ
このうち、体重を減らすことが臨床試験で確かめられ、国に医薬品として承認されているのはGLP-1系だけです。チルゼパチドという成分のマンジャロ(糖尿病の薬)とゼップバウンド(肥満症の薬)、セマグルチドという成分のオゼンピック(糖尿病の薬)とウゴービ(肥満症の薬)が代表的で、どれも週1回、自分でペン型の注射を打ちます。では、これらを打つと実際に何キロ痩せるのか。
日本人の試験で何キロ痩せたか 添付文書の数字
痩せる注射の効き目は、国の承認を受けたときの臨床試験の結果が添付文書に載っています。日本人が参加した試験の数字を並べると、次のとおりです。
| 薬 | 試験の対象と期間 | 薬のグループ | 比べたグループ |
|---|---|---|---|
| ゼップバウンド | 日本人の肥満症の人225人、72週 | 10mg:−18.4% 15mg:−22.6% | 偽薬:−1.8% |
| ウゴービ | 肥満症の人401人(うち日本人360人)、68週 | 1.7mg:−9.9% 2.4mg:−13.4% | 偽薬:−1.9% |
| マンジャロ | 日本人の2型糖尿病の人636人、52週 | 5mg:−5.8kg 10mg:−8.5kg 15mg:−10.7kg | 別の糖尿病の注射薬:−0.5kg |
※各製品の添付文書(2026年改訂版)の臨床成績より。ゼップバウンドとウゴービは体重の変化率、マンジャロは体重の変化量です。
ゼップバウンド:72週で約2割減
日本人の肥満症の人を対象にした国内の試験で、ゼップバウンドを72週間(約1年5か月)打ったグループは、15mgで体重が平均91.9kgから71.9kgへ、約2割減りました。10mgでも92.5kgから76.3kgです。偽薬のグループはほとんど変わらず、15mgのグループでは96.9%の人が体重の5%以上を減らしていました。
ウゴービ:68週で1割強減
ウゴービの試験は国際共同試験ですが、参加者401人のうち360人が日本人です。2.4mgを68週間打ったグループは、体重が平均86.9kgから75.1kgへ、13.4%減りました。体重80kgの人に当てはめると、1年以上かけて10kg強減る計算です。
マンジャロ:糖尿病の人で52週5.8〜10.7kg減
マンジャロの国内試験は、肥満症ではなく2型糖尿病の人が対象です。52週間で、5mgでは平均5.8kg、15mgでは10.7kg減りました(試験開始時の平均体重は約79kg)。5mgの5.8kgは、体重の約7%にあたります。
「2割減」は量と期間がそろったときの数字
ここで気をつけたいのが、量の違いです。ゼップバウンドの添付文書では、2.5mgから始めて4週間ごとに増やし、週1回10mgを続けるのが基本とされています。「約2割減」は、その10〜15mgを72週続けた結果です。
一方、ダイエット目的の自由診療でよく処方されるマンジャロの2.5mgは、添付文書では始めの4週間に使う導入の量で、糖尿病の治療では5mgが基本の量です。3つの試験は対象も期間も違うので単純には比べられませんが、少なくとも「痩せる注射を打てば2割減る」とは言えず、何キロ痩せるかは薬の種類、量、続ける期間によって大きく変わるということです。ゼップバウンドの添付文書には、3〜4か月打っても改善の傾向が見られない場合は中止を考えるようにとも書かれています。
副作用とやめたあと
効き目がはっきりしている薬ほど、副作用も知っておく必要があります。
吐き気・便秘などの胃腸の症状と、まれな重い副作用
ゼップバウンドの国内試験では、副作用が出た人の割合は10mgで56.2%、15mgで63.6%でした(偽薬は10.7%)。多かったのは吐き気、便秘、食欲の低下といった胃腸の症状です。多くは使い始めや量を増やしたときに出やすいとされています。まれに、急性膵炎や胆のうの病気、腸閉塞などの重い副作用が起こることもあるので、強い腹痛が続く、吐き気が止まらないといったときは、すぐに処方した医師に相談してください。
やめるとリバウンドしやすい
GLP-1系の注射は、打っている間は食欲を抑えますが、やめると食欲が戻り、体重も戻りやすいことが報告されています。注射で痩せている間に、食事や運動の習慣を整えておくことが、リバウンドを防ぐいちばんの方法です。
食事を減らしても体重が止まる停滞期がなぜ来るのかは、ダイエットで痩せない理由を国の基準で計算した記事で扱っています。
保険が使える人と、自由診療の注意点
では、痩せる注射は誰でも保険で打てるのでしょうか。答えは「肥満症と診断された人だけ」です。
保険で打てるのは肥満症の人だけ
保険で使える痩せる注射は、肥満症の薬として承認されたゼップバウンドとウゴービです。高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかがあり、食事療法と運動療法で十分な効果が得られず、BMI27以上で肥満に関連する健康障害が2つ以上ある、またはBMI35以上の人などが対象です。市販薬・保険・自由診療で、痩せる薬の対象者がどう分かれるかは、痩せる薬の記事で整理しています。
糖尿病の注射をダイエットに使う問題と救済制度
保険の条件に当てはまらない人がダイエット目的で打つのは、多くの場合、糖尿病の薬であるマンジャロを自由診療で使う形です。日本糖尿病学会は、美容・痩身・ダイエット目的での使用を推奨しないという見解を出しています。また、承認外の使い方で起きた副作用は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象になりません。
それでも自由診療を選ぶなら、量と総額を確かめることが大切です。オンライン診療の例では、DMMオンラインクリニックがマンジャロを処方していて、診察料はかかりません。2.5mgは1か月分が単月12,500円、3か月分のまとめ買いなら1か月あたり10,500円、5mgは単月22,800円で、別に550円の配送料が必要です。使用済みのペンは原則として自治体のルールで処分し、クリニックに引き取ってほしい場合は問い合わせたうえで、送料を自己負担して返送する仕組みです。地域ごとの料金の違いは、名古屋のマンジャロの記事などで比べています。
参照した情報
- ゼップバウンド皮下注 添付文書(PMDA)
- ウゴービ皮下注 添付文書(PMDA)
- マンジャロ皮下注 添付文書(PMDA)
- GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解(日本糖尿病学会)
- 医薬品副作用被害救済制度(PMDA)

