M字はげは薬で治る?生え際だけ後退した人は国の承認試験の対象外だった

※この記事は広告を含みます。掲載している料金は各院の公式サイトで確認したものです。

前髪を上げると、こめかみの上がM字に切れ込んで見える。これは勘違いなのか、M字はげの始まりなのか。そして、もしM字はげなら、薬で生え際は戻るのか。

「AGAの薬は生え際に効きにくい」という話はネットでよく見かけますが、その根拠が示されることはほとんどありません。そこでWeblioケア編集部で、AGA治療薬の添付文書や国の審査報告書を読み比べました。すると、国内の承認試験は、生え際だけが後退した人を対象にしていなかったことがわかりました。

この記事では、生え際の後退が勘違いかM字はげかの見分け方から、国の資料でわかった「生え際に薬はどこまで効くのか」、治らない・手遅れと言われる理由までを解説します。

目次

生え際の後退は勘違いか、M字はげか

最初に押さえておきたいのは、生え際がM字に見えること自体は、M字はげの証拠にならないということです。見るべきなのは「形」ではなく「変化」です。

勘違いしやすい生え際の変化

10代のころの生え際は、額の低い位置でまっすぐに近い形をしていることが多く、大人になるとこめかみの上が少し上がって、ゆるやかなM字に近づくことがあるといわれています。ある程度で止まるなら、薄毛とは限りません。もともとM字の切れ込みがある人もいます。

「眉から生え際まで指4本以上ならハゲ」という話も、医学的な基準ではありません。指の太さも顔の大きさも人によって違うからです。生え際の産毛も、それ自体は誰にでもある普通のものです。

本当の薄毛のサイン

日本皮膚科学会のガイドラインでは、AGA(男性型脱毛症)は思春期以降に始まって徐々に進む脱毛症で、前頭部や頭頂部の髪が細く短くなる(軟毛化)のが特徴とされています。以前は太い毛が生えていた生え際が、細く短い毛に変わってきたなら、AGAのサインです。

毎日鏡を見ていても、ゆっくりした変化には気づけません。いちばん確実なのは、1年前、3年前の写真と同じ角度で比べることです。前髪を上げて正面と左右のこめかみを撮っておき、半年ごとに撮り直すと、変化があるかどうかがはっきりします。

M字はげの原因と進み方

本当にM字はげだった場合、それはどんな仕組みで、どう進むのか。ここを押さえると、あとで紹介する国の資料の読み方が変わってきます。

男性ホルモンと遺伝

ガイドラインでは、AGAには遺伝と男性ホルモンが関わっているとされています。男性ホルモンのテストステロンが、5αリダクターゼという酵素で、より強いジヒドロテストステロン(DHT)に変わり、これが生え際や頭頂部の毛の成長を妨げます。AGAの飲み薬は、この酵素の働きを抑える薬です。ストレスや生活習慣は髪の健康に影響するといわれますが、それだけでAGAの進行を止めることはできません。

ノーウッド分類で見る「生え際型」と「頭頂部型」

男性の薄毛の進み方は、ノーウッド・ハミルトン分類という図で段階が分けられています。大まかには、こめかみの上から生え際が後退していくⅡ型やⅢ型、そこに頭頂部の薄毛が加わる「vertex(頭頂部)」のついた型、さらに進んだⅣ型やⅤ型、という分け方です。前頭部から後ろに向かって進む「a」のついた型もあります。

つまり、同じ「薄毛」でも、生え際だけが後退している人と、頭頂部も薄くなっている人がいるということです。この違いが、次の章の話に大きく関わってきます。

生え際に薬は効くのか M字はげの治し方を国の承認資料で確かめる

ガイドラインでは、フィナステリドとデュタステリドの飲み薬、ミノキシジルの塗り薬が、いずれも最も強い推奨度Aとされています。では、これらの薬は「生え際」で効き目が確かめられているのでしょうか。

プロペシアの国内試験は頭頂部だけを評価していた

フィナステリドの先発品プロペシアの添付文書には、日本人414人を対象にした48週間の試験が載っています。その評価方法は、頭頂部の毛髪の変化を写真で7段階に判定するというものでした。添付文書の中に、「前頭部」や「生え際」の効き目についての記載は見当たりません。

生え際だけが後退したタイプは、試験の対象に入っていない

さらに注目したいのが、試験に参加した人の条件です。プロペシアの国内試験の対象は、ノーウッド分類のⅡvertex、Ⅲvertex、Ⅳ、Ⅴでした。デュタステリドのザガーロの試験も、Ⅲv、Ⅳ、Ⅴ(Ⅳa、Ⅴaは除く)が対象です。

どちらの試験にも、頭頂部の薄毛がなく生え際だけが後退したⅡ型やⅢ型、前頭部から進むaタイプは入っていません。「生え際だけのM字はげ」に対する効き目は、国内の承認試験では直接確かめられていないということです。「生え際には薬が効きにくい」と言われる背景には、こうしたデータの偏りもあると考えられます。

ザガーロは前頭部も評価し、52週で約8割が改善

一方、ザガーロの審査報告書には、前頭部のデータもありました。日本人120人がデュタステリド0.5mgを52週間飲んだ国内の長期試験で、皮膚科専門医3人が写真を見て、飲む前より改善したと判定した人の割合は次のとおりです。

部位26週後52週後
前頭部76.1%(89/117人)78.6%(92/117人)
頭頂部81.2%(95/117人)85.5%(100/117人)

※ザガーロ審査報告書(2015年)の国内長期投与試験より。偽薬のグループがない試験です。

前頭部は頭頂部より少し低いものの、52週で約8割が改善と判定されています。ただし、この試験の参加者も頭頂部の薄毛がある人たちで、偽薬と比べた試験ではない点には注意が必要です。

前頭部ではデュタステリドがフィナステリドを上回った

ザガーロのインタビューフォームには、日本人200人を含む917人の国際共同試験の結果も載っています。24週の時点で、専門家が写真で判定した前頭部全体の発毛では、デュタステリド0.5mgがフィナステリド1mgより有意に高い改善を示しました。頭頂部全体では、両者に差はありませんでした。

ただし、毛の本数を数えて比べたのは頭頂部だけで、前頭部は写真の見た目による判定です。生え際の後退が気になる人にとっては、デュタステリドを選ぶ根拠のひとつになりますが、効き目を約束するデータではありません。

ミノキシジル外用(リアップ)は生え際に効くか

市販の発毛剤リアップX5(ミノキシジル5%)の再審査報告書には、発売後に使った2,966人の調査結果が載っています。使った人自身の印象では、6か月で抜け毛が「少し減った」以上が約65%、発毛が「少し増えた」以上が約50%で、その後18か月まではほぼ横ばいでした。

薬用シャンプーや育毛剤と発毛剤で、国が認めている効能がどう違うかは、抜け毛が多いときの対処を整理した記事で比べています。

この調査では、脱毛のタイプ(脱毛分類)によって有効率に有意な差は見られなかったとされています。ただし、これは本人の印象をもとにした調査で、部位ごとに毛を数えたものではありません。生え際に効くかどうかを数字で示した国の資料は、見つかりませんでした。

M字はげは治る?「治らない」「手遅れ」と言われる理由

国の資料を読むと、生え際に薬が「効かない」わけではない一方、「生え際だけの人」で確かめられたデータは乏しいことがわかりました。では、M字はげは治るのでしょうか。

生え際が治りにくいと言われる背景

まず、AGAは放っておくと徐々に進む脱毛症で、自然に元に戻ることは期待できません。薬は飲んでいる間は効果を保ちますが、体質を変えるわけではないので、やめれば再び進みます。これが「治らない」と言われる理由のひとつです。

加えて、ここまで見たように、国内の承認試験は頭頂部の薄毛がある人を中心に、主に頭頂部で効き目を確かめてきました。生え際だけが後退している人は、「自分と同じタイプの人でどれだけ効いたか」を示すデータがないまま治療を始めることになります。効き目を確かめるために、治療前と同じ角度で写真を撮り、少なくとも6か月は続けて比べることが大切です。

手遅れの目安と植毛

「手遅れ」と言われるのは、毛を生やす力が残っている段階のほうが、治療の効果が出やすいと考えられているためです。細い毛や産毛でも毛が残っているうちは、手遅れとは限りません。反対に、長い間まったく毛が生えていない部分を薬だけで元に戻すのは難しいことがあります。

生え際の後退が進んでいる場合は、後頭部の自分の毛を生え際に移す自毛植毛という方法もあり、ガイドラインの推奨度はBです。人工の毛を植える方法は推奨度Dとされています。なお、ミノキシジルの飲み薬は日本でAGAの薬として承認されておらず、ガイドラインでも推奨度Dです。

治療と並行して、髪型で生え際を目立たなくするのも現実的な方法です。前髪を長く伸ばして隠すより、サイドを短くしたスタイルのほうがM字は目立ちにくいといわれていて、かつらもガイドラインで推奨度C1(行ってもよい)とされています。

治療を受ける場所

フィナステリドやデュタステリドは、医師の処方が必要な薬です。

AGA治療は保険が使えない

AGAの治療は保険が使えない自由診療で、皮膚科でもAGA専門のクリニックでも、費用は全額自己負担です。クリニックによって料金が大きく違うので、薬の名前と1か月あたりの費用で比べて選びましょう。生え際の後退が気になっていることは、受診のときにはっきり伝えてください。前頭部のデータがあるデュタステリドを選ぶかどうかも含めて、医師と相談できます。

オンライン診療

AGAの飲み薬は、オンライン診療でも処方してもらえます。たとえばDMMオンラインクリニックは、フィナステリド1mgの「予防プラン」を単月3,960円、定期便なら1か月3,520円で処方しています。診察料はかからず、送料として550円が必要です。女性の生え際や分け目の薄毛は原因が違うため、女性の分け目の薄毛の記事を参考にしてください。

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