PMSとは?生理前の眠気・食欲・イライラの原因と、産婦人科医の約8割が最初に選ぶ薬

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生理の数日前になると、昼間から眠くてしかたがない。お菓子に手が伸びて止まらない。ささいなことで家族や恋人にきつく当たって、あとで落ち込む。生理のたびにくり返すこの不調がPMS(月経前症候群)なのか、どうすれば軽くなるのか、知りたい人は多いと思います。

日本産科婦人科学会の「月経前症候群・月経前不快気分障害に対する診断・治療指針」には、産婦人科医を対象にした調査の結果が載っています。PMSの治療で最初に選ばれていた薬は低用量ピル(76.8%)。欧米で第一選択とされる抗うつ薬の一種(SSRI)はわずか2.6%でした。そして、学会が勧める方法で診断していた医師は8.4%にとどまっていました。

この記事では、この指針と、市販薬プレフェミンについて国(PMDA)がまとめた再審査報告書をもとに、PMSの見分け方、眠気・食欲・イライラが起きる理由、市販薬・ピル・漢方・SSRIそれぞれの根拠、婦人科と心療内科の選び方を解説します。

目次

PMSとは 生理前の不調がPMSかどうかの見分け方

日本産科婦人科学会は、PMSを「月経前3〜10日の黄体期のあいだ続く精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減退ないし消失するもの」と定義しています。つまり、生理の3〜10日前ごろから始まり、生理が来ると軽くなるか消える不調のことです。

生理前の不調は8〜9割の女性に、PMSと診断されるのは2〜3割

指針によると、軽い症状まで含めれば女性の80〜90%が生理前に何らかの不調を経験し、そのうちPMSと診断されるのは20〜30%、心の症状が特に重いPMDD(月経前不快気分障害)は1.2〜6.4%と報告されています。ただしこれは主に海外の調査の数字で、日本ではやや低い数値が報告されているとも書かれています。

典型的な症状として指針が挙げているのは、体では乳房の張り、下腹部の張り、頭痛、疲れ、腰痛、むくみ、心では気分の浮き沈み、怒りっぽさ、いらだち、憂うつ、不安です。症状の種類は人によって違い、1つだけの人もいれば、いくつも重なる人もいます。

見分けるポイントは「生理が来たら消えるか」と2周期分の記録

眠気もイライラも、睡眠不足や仕事のストレスで起こります。PMSかどうかを分けるのは症状の中身ではなくタイミングで、生理前に決まって悪くなり、生理が来ると引いていくかどうかがポイントです。

そこで指針は、月経2周期分、毎日の症状を記録することを勧めています。専用の用紙でなくても、生理日管理アプリや簡単なメモで構わないとされています。反対に「最近どうですか」と思い出して答える方法は、診断という意味では不正確になりやすいと注意されています。

ところが、先ほどの調査で、この2周期の記録にもとづいて診断していた産婦人科医は8.4%、大半(84.4%)はおおまかな問診に頼っていました。受診を考えているなら、自分で記録をつけて持っていくのが、診察の精度を上げるいちばん確実な方法です。記録を見れば、生理と関係なく続く不調(もともとある病気が生理前に悪化しているケース)との区別もつきやすくなります。

妊娠超初期の症状との違い

眠気、だるさ、胸の張り、熱っぽさは、PMSにも妊娠のごく初期にも見られる症状で、症状だけでどちらかを見分けることはできません。違いが出るのは、その後です。PMSなら生理が来て症状が引いていき、妊娠していれば生理は来ません。性行為があって予定日を1週間過ぎても生理が来ないときは、市販の妊娠検査薬で確かめてください。

生理前に眠い・食欲が止まらない・イライラするのはなぜか

PMSが起きる仕組みは、まだ完全には解明されていません。指針では、排卵にともなう女性ホルモンの変動や、脳内の神経伝達物質(セロトニンやGABAなど)のバランスの乱れが関わっていると考えられていて、遺伝やストレスも影響する可能性があるとされています。

指針に載っているPMSの症状チェック表(PMS症状スクリーニング調査票)には、眠気や食欲についての項目もあります。まずは、自分の症状がそのどれに当たるかを見ていきます。

眠い:寝すぎても、寝つけなくても同じPMSの症状

チェック表の眠りの項目は「寝過ぎた、朝起きるのがつらかった。あるいは寝付けなかったり夜中にめがさめた。眠気の状態がふだんと違った」です。昼間眠くてたまらないのも、夜眠れないのも、同じひとつの症状として扱われているということです。

排卵から生理までの時期(黄体期)は、黄体ホルモンの働きで体温が高くなります。夜に体温が下がりにくいぶん眠りが浅くなり、黄体ホルモン自体にも眠気を誘う作用があると考えられています。生理が来ると落ち着くことが多いので、この時期は予定を詰め込みすぎず、寝る前のカフェインやアルコールを控える、起きる時間をそろえるといった工夫で乗り切るのが基本です。生理が来ても日中の強い眠気が続くなら、PMS以外の原因(過眠症など)も考えて受診してください。

食欲:甘いもの・炭水化物が欲しくなる

チェック表の食欲の項目は「常にお腹がすいており食べ過ぎた。あるいは特定の食べ物に執着を感じた」。量が増えるだけでなく、甘いものやパンなど特定の食べ物がやめられなくなるのも、PMSの症状のひとつです。

食事の工夫として指針に挙がっているのは、少量ずつ回数を分けて食べる、果物や野菜、全粒穀物などの複合炭水化物やカルシウムの多い食品をとる、精製された砂糖や塩分、脂肪、カフェインを減らすことです。黄体期に複合炭水化物を増やすと脳内のセロトニンが増え、心の症状と食欲がやわらいだという報告もあります。ただし指針は、こうした食事の推奨は体系的に評価されたものがほとんどないとも書いています。無理に我慢するより、お菓子をおにぎりやヨーグルトに置き換えるくらいの、続けられる範囲で試すのが現実的です。

イライラ・落ち込み:仕事や人間関係が壊れるほどならPMDD

指針は、規則正しい睡眠、バランスのとれた食事、適度な運動、ストレス管理を勧める一方で、こうした生活習慣の指導には明確なエビデンスはないとはっきり書いています。運動についても、改善したという研究はあるものの、どんな運動をどれだけすればよいかは明確ではないとしています。

代わりに勧められているのが、自分の体調や気分のパターンを把握し、否定的な考えを現実的なものに置き換えていく認知行動療法です。記録をつけて「この時期はイライラしやすい」と前もってわかっているだけでも、大事な話し合いを避けるといった対策が立てやすくなります。

仕事に行けない、人間関係が壊れるほど怒りが抑えられない、ひどく落ち込むといった心の症状が中心なら、PMSの重いタイプであるPMDDの可能性があります。気の持ちようではなく、薬で治療する対象です。

頭痛・だるさ・むくみ:痛み止めと利尿薬

頭痛や腹痛、腰痛には、ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの鎮痛薬(NSAIDs)か、アセトアミノフェンで症状をやわらげられるとされています。痛み止めを飲む日が増えている、頭痛がだんだん強くなっているという場合は、別の治療を考える段階です。

むくみには利尿薬が使われることがあり、指針によると、フロセミドなど一部の利尿薬は「月経前緊張症」に保険が使えます。37度前後の微熱っぽさやだるさは、黄体期に体温が上がるためで、生理が来れば下がるのがふつうです。38度を超える、せきやのどの痛みがある、生理のあとも続くといった場合は、PMS以外の原因を疑ってください。

PMSの薬 市販薬・ピル・漢方・SSRIの根拠を比べる

生活の工夫だけではつらいときに使われる薬は、大きく4つです。指針と国の資料から、それぞれの根拠をまとめると次のとおりです。

薬手に入れ方指針・国の資料にある根拠保険
プレフェミン(チェストベリー)薬局・ドラッグストア(18歳以上)偽薬と比べたメタ解析で有意な改善。ハーブの中で最も検証されている市販薬
低用量ピル(OC・LEP)婦人科・オンライン診療9件の試験のメタ解析で偽薬より改善。最もよく調べられているのはドロスピレノンを含むピルPMSだけなら自費。月経困難症の治療なら保険のLEP
漢方薬婦人科など産婦人科で広く使われるが、臨床効果の検証は十分ではないPMSとしての適応はなく、「血の道症」などの適応で処方
SSRI婦人科・心療内科・精神科偽薬と比べたメタ解析で優位。欧米では中等症以上の第一選択PMS・PMDDの治療には保険適用外

※日本産科婦人科学会「月経前症候群・月経前不快気分障害に対する診断・治療指針」、プレフェミン再審査報告書(PMDA)より。

プレフェミンは3か月続けると約9割が「有効」、ただし数え方に注意

プレフェミンは、チェストベリー(西洋ハーブ)のエキスを成分とする市販薬で、効能は「月経前の次の諸症状(月経前症候群)の緩和:乳房のはり、頭痛、イライラ、怒りっぽい、気分変調」です。飲めるのは18歳以上の女性で、1日1回1錠を飲みます。

国の再審査報告書には、承認前の試験と、発売後の調査の両方の結果が載っています。

飲んだ期間承認前の試験(67人)発売後の調査(1,321人)
1か月(1周期)64.2%62.2%
2か月(2周期)80.6%80.9%
3か月(3周期)91.0%86.9%

※プレフェミン再審査報告書(PMDA、2022年)の「有効」と判定された人の割合。

どちらも1か月目は6割ほどで、続けるほど「有効」の割合が上がっています。1か月飲んで効かないと感じても、すぐに見切りをつけなくてよいということです。

ただし、「有効」の数え方は2つで違います。承認前の試験は、イライラ、憂うつな気分、怒り、頭痛、お腹の張り、乳房の張りの6つの症状の強さが半分以下になった人を「有効」としたものです。一方、発売後の調査は薬局でのアンケートで、本人が「よく効いた」「効いた」「少し効いた」と答えた人をすべて含みます。また、この報告書には偽薬と比べた結果は載っていません。偽薬との比較については、学会の指針が、チェストベリーの試験を集めたメタ解析で有意な改善が認められたと紹介しています。

副作用は、発売後の調査で5,667人中7.4%に見られ、多かったのは月経の遅れ(1.2%)や月経不順、頻発月経などの生理の変化でした。この数字も本人の訴えをもとに集めたもので、報告書は承認前の試験(1.5%)より高く出た理由をそう説明しています。

日本の婦人科では低用量ピルが第一選択(76.8%)

低用量ピルは排卵を止めて、女性ホルモンの大きな変動を抑えます。指針によると、9件のランダム化比較試験をまとめた解析で、ピルは偽薬よりPMSの症状全体を改善していました。

ただ、ピルなら何でも同じというわけではありません。指針は、第2世代までの黄体ホルモンを使ったピルでは、PMSへのはっきりした効果は示されていないとし、最もよく調べられているのはドロスピレノンという黄体ホルモンを含むピルだとしています。休薬をはさまずに続けて飲む方法(連続投与)のほうが効果が期待できるとも書かれています。

費用の面では、PMSだけを理由にピルを処方してもらう場合は自費です。一方、生理痛が強く月経困難症と診断されれば、治療用のピル(LEP)が保険で処方されます(ピルで生理痛がどれくらい軽くなるかの記事)。ドロスピレノンを含む薬には、たとえばヤーズフレックスがありますが、効能は月経困難症と子宮内膜症にともなう痛みで、PMSは入っていません。生理痛もつらい人は、そのことも医師に伝えましょう。

漢方は加味逍遙散がいちばん多い

指針の調査では、最初に漢方薬を選ぶ産婦人科医が19.5%いて、使われていた漢方は加味逍遙散(73.6%)、当帰芍薬散(53.3%)、抑肝散(51.5%)、桂枝茯苓丸(36.5%)の順でした。加味逍遙散は、ほてりなどの体の症状と、イライラや不安などの心の症状が入りまじったときの代表的な処方とされています。

一方で指針は、漢方の臨床効果は十分に検証されていないこと、PMSやPMDDという病名に直接の適応を持つ漢方はなく、「血の道症」や「神経症」といった適応で処方されていることも書いています。また、多くの漢方薬に含まれる甘草(かんぞう)は、むくみや血圧の上昇などを起こす偽アルドステロン症に注意が必要です。市販の漢方をいくつも自己判断で重ねて飲むのは避けてください。

欧米の第一選択SSRIは、日本では2.6%

SSRIは、うつ病などに使われる抗うつ薬の一種です。欧米では中等症から重症のPMS・PMDDの第一選択薬とされていて、日本で使えるセルトラリン、エスシタロプラム、パロキセチンには質の高いエビデンスがあります。ところが日本の産婦人科での使用は、先ほどのとおり2.6%にとどまります。なお、PMSやPMDDの治療に使う場合は保険が適用されません。

PMSへのSSRIには、うつ病の治療と違う特徴があります。飲み始めた日から効果が出ることが知られていて、生理の約2週間前から症状が出る時期だけ飲む方法も選べます。副作用としては吐き気や眠気、だるさなどがあり、指針は24歳以下では自殺に関わる行動のリスクが高まるという指摘があることから、慎重に使うよう求めています。心の症状が強いPMDDでは、選択肢として知っておきたい薬です。

PMSは婦人科と心療内科どっちに行くか

ここまでの薬のうち、ピルは婦人科、SSRIは婦人科でも心療内科・精神科でも処方されます。では、最初はどこに相談すればよいのでしょうか。

症状で選ぶ受診先

基本は婦人科です。症状が生理の周期と関係しているかを確かめ、ピルや漢方、必要ならSSRIまで、ひととおりの治療を相談できます。体の症状が中心の人、生理痛もある人、ピルを試したい人は婦人科を選びましょう。

一方、指針は次のような場合に、精神科・心療内科への紹介を検討するとしています。

  • 心の症状が重く、婦人科での治療では効果が不十分
  • 暴言や乱暴な行動がある、自分や人を傷つけたくなる、死にたい気持ちが強まるなど、生活への影響が重い
  • 生理と関係なく気分が不安定で、もともとある心の病気(うつ病、不安症、過食症など)が生理前に悪化している疑いがある

指針には、生理前は自殺の危険性が高まる時期だという報告があるとも書かれています。死にたい気持ちが強いときは、婦人科の予約を待たずに、心療内科や精神科に相談してください。どちらを受診する場合も、2周期分の記録があると診察がスムーズです。

オンライン診療で低用量ピルを相談する

生理前のつらい時期に、仕事を休んで婦人科に通うのは簡単ではありません。低用量ピルは、初診からオンライン診療で処方してもらうこともできます。

一例として、DMMオンラインクリニックは低用量ピルを診察料なしで処方していて、ファボワール、アンジュ、ラベルフィーユの3種類は1シート2,980円、定期便にすると1か月2,380円からです。これとは別に配送料が550円かかり、保険は使えない自由診療です。なお、この3種類はどれもドロスピレノンを含まないピルです。生理痛もあって保険のLEPを使いたい人や、指針で最も調べられているドロスピレノンのピルを試したい人は、対面の婦人科で相談するほうが近道です。ピルには血栓症などの副作用もあるので、オンラインでも問診では持病やたばこのことを正確に伝えてください。

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