禁煙外来の成功率を一次資料で確かめた 5回完遂で終了時75%、9か月後50%【2026年最新】

禁煙外来の成功率は、調べるほど数字がばらつきます。7割と書いてあるページもあれば、3割と書いてあるページもある。どちらかが嘘をついているわけではなく、「何をもって成功とするか」の定義が違うためです。

Weblioケア編集部は、公的機関が公表している一次資料に当たり、それぞれの数字がどの時点の何を測ったものかを整理しました。結論を先に書きます。意志の力だけで1年以上の禁煙に成功できる人は1〜3%。禁煙外来で5回の診察をすべて受けた人は、治療終了時で約75%、9か月後で約50%が禁煙に成功しています。

そして、あまり知られていないことがひとつあります。患者が治療を完走できているかどうかで、医療機関が受け取る診療報酬が変わる仕組みがあります。完走は患者だけの課題ではありません。

目次

自力の禁煙成功率は1〜3%、約1割ではない

まず、比較の基準になる自力の数字です。

国立がん研究センターがん情報サービスは、毎年、喫煙者の約3分の1が禁煙を試みているものの、そのほとんどが自力で行っているため、1年以上の禁煙に成功できる人はわずか1〜3%であるという報告を紹介しています。

ウェブ上では「自力の禁煙成功率は約1割」という記述をよく見かけますが、公的機関が示している数字はこれよりひと桁低いものです。1割という数字がどの調査に由来するのかは確認できませんでした。ここでは出典の明確な1〜3%を採ります。

なお、1〜3%は「1年以上」という条件つきの数字です。数日から数週間やめられる人はもっと多い。長く続かないところに、ニコチン依存の難しさがあります。

5回完遂で終了時75%、9か月後50%

一方、禁煙外来を最後まで受けた場合の数字です。国立がん研究センターは、日本循環器学会ほか4学会による「禁煙治療のための標準手順書 第8.1版」をもとに、5回の診察すべてを受けた人は治療終了時で約75%、治療終了9か月後でも約50%が禁煙に成功しているとしています。

ここで注目したいのは、75%と50%という2つの数字が並んでいることです。治療が終わった直後は4人に3人が禁煙できていますが、9か月後には2人に1人に減ります。25ポイント分の人が、治療終了後に再喫煙しているということです。

「禁煙外来の成功率は7割」も「5割」も、どちらも間違いではありません。前者は終了時、後者は9か月後の数字です。数字を見るときは、必ず判定時点を確認してください。

実臨床の数字はもっと低い

ここまでは「5回完遂した人」に限った数字です。途中でやめた人を含めた、実際の医療現場全体の数字も公表されています。

中央社会保険医療協議会の「ニコチン依存症管理料算定保険医療機関における禁煙成功率の実態調査報告書」による継続禁煙率は次のとおりです。

調査年度 9〜12週の継続禁煙率 9〜52週の継続禁煙率
平成19年度 54.1%(1,377/2,546例) 32.6%(830/2,546例)
平成21年度 56.1%(1,946/3,471例) 29.7%(1,030/3,471例)
平成29年度 58.3%(763/1,308例) 27.3%(357/1,308例)

1年後(9〜52週)の継続禁煙率は3割を切っています。しかも3回の調査を通じて、12週時点の数字は54.1%から58.3%へ上がっているのに、1年後の数字は32.6%から27.3%へ下がっています。短期の成績は改善しているのに、長期の維持はむしろ悪くなっている。

この調査における「禁煙継続」の定義も報告書に明記されています。9〜12週の数字は、1〜4回目で治療を終えた患者については終了時に禁煙していた者、5回目まで終えた患者については4週間の禁煙を継続した者を「継続」と数えています。9〜52週の数字は、指導終了後9か月時点で4週間の継続禁煙が確認できた者です。

成功の判定は自己申告だけではない

禁煙の成功判定には、客観的な指標が使われます。呼気一酸化炭素濃度の測定です。

たばこの煙には一酸化炭素が含まれるため、喫煙していれば呼気中の濃度が上がります。臨床試験では呼気CO濃度が10ppm以下であることを、自己申告と併せて成功の条件にしています。実際、CureApp SCの治験(国内31施設・584例)では、CO濃度が10ppmを超えているのに喫煙していないと申告した被験者はいませんでした。

成功率を掲げているクリニックやメディアを見るときは、その数字が自己申告のみによるものか、呼気CO測定で確認されたものかを見てください。定義と出典を開示しているかどうかが、信頼できる情報の見分け方になります。

なお、加熱式たばこのみを使用していて呼気CO濃度の上昇が見られない場合は、再診での測定を省略できる扱いになっています。この場合、判定は自己申告に依存します。

完走は患者だけの課題ではない

ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。

ニコチン依存症管理料には、医療機関側の実績要件があります。過去1年間にこの管理料を算定した患者について、指導の平均継続回数が2回未満だった医療機関は、翌年度から所定点数の100分の70でしか算定できません。計算期間は前年4月1日から当年3月31日までで、その実績に基づく点数は当年7月1日から適用されます。

過去1年間の平均継続回数 算定できる点数
2回以上 所定点数の100分の100
2回未満 所定点数の100分の70
算定実績なし 所定点数の100分の100

届出には様式8の2が使われ、平均継続回数とあわせて喫煙を止めた者の割合も厚生局へ報告することになっています。

つまり、患者を12週間・5回のプログラムに通わせきることが、医療機関の収入に直結する制度設計になっています。禁煙外来を選ぶときに「通いやすさ」を重視するのは、患者側の都合であると同時に、医療機関側も同じ方向を向いているということです。継続しやすい体制を整えている医療機関には、そうする理由があります。

やり直しには1年の壁がある

完走が重要なもうひとつの理由は、保険での再挑戦に制限があることです。

ニコチン依存症管理料は、初回に算定した日から起算して1年を超えた日でなければ、再度算定できません。途中でやめてしまった場合、次に保険で禁煙治療を受けられるのは1年後になります。それより早く再挑戦したい場合は、自由診療になります。

「つらくなったら一度やめて、また来月始めればいい」という考え方は、保険の枠組みでは通用しません。始めるタイミングを選ぶこと自体が、成功率に関わってきます。

成功率を上げるために実際にできること

データから導かれる対策は、それほど多くありません。

薬を使う

自力の1〜3%に対し、禁煙補助薬を使った治療の数字は桁が違います。ただし薬ごとの成績は判定時点も対象も異なるため、単純比較はできません。薬別の実数はチャンピックスの効果と禁煙成功率で、電子添文の原データに当たって整理しています。

5回目まで行き切る

終了時75%と9か月後50%という差が示すのは、治療が終わってからも再喫煙が起きるということです。逆に言えば、5回目の診察まで到達することが最低条件になります。喫煙欲求が早く消えても、途中で通院をやめないでください。

通い切れる形を先に選ぶ

実臨床の12週時点の数字が5〜6割にとどまっているのは、途中で来なくなる人が一定数いるためです。2〜4回目の3回は情報通信機器での診察を選べるので、通院の負担が理由なら、この選択肢が有効です。オンラインを使ったほうが自己負担も下がります。金額の内訳は禁煙外来オンライン診療の料金で計算しています。対応している医療機関は禁煙外来のオンライン診療おすすめ比較16院にまとめました。

治療終了後の空白に手を打つ

保険の禁煙治療は12週で終わりますが、再喫煙が起きるのはその後です。この空白期間を埋めることを目的に開発されたのが治療用アプリで、臨床試験でも長期ほど差が広がる結果が出ています。詳しくは禁煙アプリのおすすめはで扱っています。

禁煙外来の成功率に関するよくある質問

禁煙外来の成功率はどのくらいですか

5回の診察をすべて受けた人で、治療終了時が約75%、9か月後が約50%です。途中でやめた人を含めた実臨床全体では、1年後の継続禁煙率は3割を切っています。

自力とはどのくらい違いますか

自力で1年以上の禁煙に成功できる人は1〜3%です。5回完遂時の約50%(9か月後)と比べると、差は10倍以上あります。

「成功率7割」という表示は誇張ですか

治療終了時の数字であれば誇張ではありません。ただし9か月後は約50%まで下がるため、判定時点が書かれていない数字は注意して読んでください。

途中でやめたら保険でやり直せますか

初回に算定した日から1年を超えるまで、保険での再算定はできません。それより早く再開したい場合は自由診療になります。

加熱式たばこでも成功率は同じですか

ニコチン依存症管理料は加熱式たばこの使用者も対象です。ただし呼気CO濃度が上昇しないため、成功の判定方法が紙巻たばこの場合と異なります。

この記事で参照した一次資料

あわせて、CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカーの審査報告書(独立行政法人医薬品医療機器総合機構、令和2年5月28日)を参照し、呼気CO濃度による判定基準と中医協実態調査の数値を確認しています。

数値は調査年度と判定基準によって変わります。この記事は2026年9月2日時点で公表されている資料に基づいています。

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